マルチスクリーン対応 と デバイス依存対応
- 2015.07.03
- コラム
現在、スマートフォンやタブレットなどPC以外のWebのスマートデバイスへの対応は、「(Webの) マルチデバイス対応 」とか「(Webの) マルチスクリーン対応 」と呼ばれます。技術的観点から正確に言えば、コンテンツの作りをデバイス(iPhone 6とかNexus 7など)に対応するのではなく、スクリーンの物理的な大きさや解像度(4インチや10インチと解像度)への対応であるため、「 マルチスクリーン対応 」が正しいと言えます。
一方、「マルチデバイス対応」という言葉は、3,4年前までガラケー対応に対しても使われていました。そのガラケー対応というのは、「キャリア依存対応」と「デバイス依存対応」が大きなテーマでした。何しろ、普通のHTMLは動かず、キャリア毎・世代毎の方言が何種類も混在し、その上でデバイス毎の仕様さえ存在しました。そして、ガラケーはシステム更新できないので、個々のデバイスに存在した癖やバグは恒久的な仕様でもあったのです。そんなガラケーデバイスが、2010年頃には1000種類以上も市場に存在していたのです(実は今もしていますが…)。
スマホ時代の ” マルチスクリーン対応 ” 方法とは
ガラケーのマルチデバイス対応にはキャリアビジネスの事情が深く絡んでいました。多くのガラケーサイトが、公式検索・ランキングに入れてもらう為に、公式サイトとして運営されていました。公式サイトはキャリアチェックを正式に通過する必要がありました。そして、各キャリアの端末で不具合があると登録がNGになるので、古い端末も新しい端末もきちんと対応する必要があり、全機種テストなども行われていました。キャリアとしても公式サイト、特に課金サイトは、チェックを厳しくする必要があったのです。ユーザーも毎月支払いをしているので、サイトに対しては相当厳しく、画像が1つ出ないだけで夜中にクレーム電話が来ることもしばしばだったのです。
こんな事情が重なりモバイル対応といえば、「デバイス依存を解決しなくては!」という意識が今でも大きく残っています。実際、iPhone 3とiPhone 6では違いがありますし、Android 2.x/4.xの間でも仕様や動作の違いがあります。特にCSSの挙動や見え方や、JavaScriptの細かな挙動などについてです。また、AndroidやWindowsなどは、無数のメーカーが争って新機種を発売するので、デバイス依存を解決するマルチデバイス対応が益々必要と考える人もいるでしょう。
しかしスマホ時代の今、ガラケー時代のような対応を目指すことは必要ありませんし、目指してはいけません。全機種実機テストをすべき、などといった考え方はスマホ時代の間違ったアプローチです。今の状況は大きく異なります。スマホのマルチデバイス対応は、キャリアビジネスの都合ではなく、一般的なビジネス判断によって決める時代になったのです。公式検索・ランキングもキャリアチェックも有料会員の存在もありません。過去に苦しめられた(ボーダフォン・Nokia・WML対応のような)割に合わない個別端末対応は現在、行う必然性がありません。ビジネス全体のスピードを下げることからすれば、むしろ行ってはいけないものです。常に全体のビジネス合理性の中でマルチデバイス対応が決定されます。
また、システム的にもガラケー時代とは違います。ガラケーでは唯一の公式ブラウザーを使うことになっており、その仕様が変わることも、不具合が修正されることもありませんでした。ユーザーにサイトを利用してもらう為には、サービス側がトコトン合わせるしかありませんでした。一方スマホでは、ユーザーは複数のブラウザーを選択する自由があり、OSもブラウザーも日々アップデートされて、新たな仕様を取り込んだり、不具合が修正されていきます。そうなると、一部の端末の特殊な仕様や不具合に性急に対応する必要性は薄いと言えます。
スマホ時代のマルチデバイス対応をまとめると3点になります。
- マルチスクリーンへの対応
- jQuery/Bootstrapなどマルチブラウザ対応ライブラリの利用
- 機種を判別し個別対応できる仕組み
マルチスクリーン対応は基本で、4~12インチへの対応が必要です。そして、jQueryなどのマルチブラウザ対応しているライブラリを使うことで、機種間の違いや微調整を大幅に減らすことができます。そして、最終的に個別の対応が必要な際には、利用できる仕組みがあると安心です。
マルチデバイス対応に対して間違わない為に理解すべきことは、ガラケーと比較すればスマホにおける機種依存問題は、取るに足らない小さな問題であることです。なぜなら、OS自動更新やブラウザーの選択、標準仕様動作する能力増強など、根本的な解決がスマホでは図られているからです。それ故に、この問題は更に小さくこそなれ、大きくはならない問題なのです。だから、ビジネス合理性を考えれば、やり過ぎは禁物だと言えるでしょう。